コロナ禍で広がるAR・VRの技術活用
2021年6月28日
AR・VRとは
未来の生活を支える技術として、世界各国が開発を進めているのがARとVRです。ARとはAugmented Realityの略で、日本語で「拡張現実」という意味です。VRは、Virtual Realityの略で、日本語に訳すと「仮想現実」という意味になります。どちらも特殊な機器を装着して使うという部分は共通していますが、この2つの内容には明確な違いがあります。
その違いとは、画面越しに見える映像です。まずARは「現実の拡張」なので、画面越しに見る映像には、現実がそのまま映し出されています。その映像と共に、外部から送られてきた情報が表示されます。
VRは「仮想の現実」なので、画面越しに見ている映像は全て実際には存在しておらず、情報端末がデータを組み上げた情報(映像)を見ることになります。目から得た情報が直接脳に届けられるので、見ている光景は現実に存在していないのに本物だと認識してしまう、錯覚現象が引き起こされます。
身近になるAR・VR技術
ARとVRの歴史は古く、1970年代に生まれた技術です。この時は機器が大型すぎて、専用の施設でないと使えませんでした。それから40年以上が経ち、これまでは軍事・医療・建設業だけで使われてきたARとVRが、一般家庭用として実用化される時代が迫ってきています。
ARについてはすでに実装済みで、スマートフォンやタブレットにおける電子決済サービスやQRコードを読み込むときなど、身近なものに利用されています。今後はスマートフォンやタブレットを使わなくても、皮膚に埋め込んだチップや、アップルウォッチのように腕に、または目に装着するだけで使えるように進化していくと考えられています。
VRについては、一般家庭用としてOculusとVIVEの限定販売が開始されています。Oculusはフェイスブックの子会社が開発した映像機器で、アプリでセットアップすることで利用できます。VIVEは同名企業が開発したウェアラブルカメラで、目に装着することでゲームを含めた仮想現実を堪能することができます。
現実を超える経験や体験を非接触で提供可能に
そもそも、なぜARやVRが望まれるようになったのかと言うと、利便性の他に、やはり2019年の年度末から世界中に広がった新型コロナウイルスの流行が関係しています。新型コロナウイルスの感染経路は現状では完全に特定できていませんが、接触感染(感染者の手についたウイルスがドアノブなどを介して伝播すること)と飛沫感染(唾液などの飛沫に含まれたウイルスが粘膜に付着すること)が主な感染経路だと考えられています。
接触感染や飛沫感染を防ぐには、ソーシャルディスタンスが必要になります。しかし、人と人とが物理的に距離を保つことが必要となると、学校教育などを含む様々な場面で影響が出てしまいます。特に問題となるのが、顧客に直接の商品紹介ができないことで、商品開発や不動産を営んでいる企業の業績が影響されてしまうことです。
しかし、ARやVR技術を活用すれば、直接顔を合わせる必要はありません。相手に必要な情報を送ると、専用の端末が受け取った情報を表示してくれるので、非接触で情報提供が可能になります。
具体的な活用事例
ARやVRの実装は間近と言いましたが、建設業のようにすでに活用している事例も多くあります。建設業においては、施工主があらかじめ作成した完成予想図を、機器を使って施主に提示するなどしています。施主は提示された完成予想図を基に望むニーズを具体的に伝えることができ、理想の家づくりが可能になります。
次に消防や自動車教習の場では、安全教育として活用されています。例えば自動車の運転であれば、ARやVRを使うことによって、曲がり角などの目視が難しい場所や都市部での運転に対してのKYT(危険予知トレーニング)活動を実施することができます。
そして消防でも、火災や水難などの災害に見舞われた際にパニック状態となって正しい行動が取れなくなるのを防ぐため、KYT活動の一環としてARやVRを活用しています。実際の光景を映し出し、選択肢で間違った行動と正しい行動を表示します。その表示を見ながら行動をすることで、いざ当事者になったときにも即座に正しい行動ができる力を養います。